御所人形について
御所人形は、江戸時代中期に観賞用の人形として大成され、宮中の慶事や ご出産、あるいはご結婚など、さまざまな祝事の際に飾られてきた由緒ある人形です。また、宮中に参内した公家、大名家などに下賜されました。
その大きな特徴は三頭身であることと、透き通るような白い肌にあります。 江戸時代にはその特徴から「頭大人形」や「三つ割人形」など様々な名称で呼ばれていたのですが、明治時代になって、宮廷や公家、門跡寺院といった高貴な人々の間で愛されたところから「御所人形」という名称で呼ばれるようになりました。
伊東家の御所人形の制作には、初代庄五郎の頃より木彫法による制作を続けています。30年以上も自然乾燥させた桐の木が用いられ、良質な木材の確保のため代々の当主が木材を保存し引き継いでいます。これを細部に至るまで彫刻した 桐の生地に、胡粉(牡蠣の貝殻の内側の部分を擂り潰したもの)を塗っては 磨き、また塗っては磨くことを50回ほど重ねることにより、白い肌の光沢が出ます。粗削りから仕上げまでは通常1年近く、時には3年をかけて制作されます。
御所人形はその成り立ちや、品格から、古くより人形の中でも最も格式高く、 最上のものとされています。あどけない稚児の姿をうつしたふくよかな姿、 時に愛らしく、時に凛とした表情を見せる気品ある姿。御所人形は日本を代表する人形でしょう。
胡粉高盛金彩絵について
木地の肌へ、じかに顔料で文様を施した彩絵の筥や台は、奈良時代に作られたものが今日正倉院に数多く伝えられています。 この伝統はその後宮中に伝わって有職調度として作られ用いられてきました。
伊東久重は、このような有職風な伝統の基盤の上に、御所人形の精緻な胡粉の技術を駆使し、桐材を用いた筥、羽子板、小槌などに胡粉で文様を高く盛上げ、彩色を施したものを試み、新しい形で開花させました。 これが胡粉高盛金彩絵です。
こぼれるように豊かな文様が描き出される胡粉高盛金彩絵は、完璧な技術に裏づけられた京都風な華やかさと気品の高い雅致を備えています。
しらたま
当代久重考案の「しらたま」。300年に渡る伝統工芸を用い、
素材に30年来自然乾燥させた桐木、50回ほど重ねる胡粉塗布。透き通るような白い肌の無垢で愛らしい御人形さんです。